Open DMX Ethernet を活用してワイヤレスDMXの構築


【 WiFiの接続に関する注意事項 】(2015年08月12日:追記)

 ◎2014年後半から現在まで、WiFiがつながりにくいといった内容の相談を多く受けています。
今までは全く問題がなかったのに、同一現場でも最近は特につながらないといった内容です。
(これは、2.4GHzでも5.0GHzでも、双方の周波数で同様の現象です)

 私もこの現象を何度か経験しており、まったく同じ現場でも、今までは簡単につながったのに、
2台がリンクするまでとても時間がかかったり、リンクが完了しても、直ぐにリンクが外れて制御
(通信)不能になったりします。

 今までも、特に東京・大阪等の大都市ではWiFiの局数がとても多いので、つながりにくいといった
現象はネット等で聞いていました。
ところが私が体験したのは、高知県の中山間地域でWiFiの局数はそれほど多くは無いと思います。

 過疎地域でも、WiFiの普及と共に局数が大きく増えて、つながりにくくなってきているのかも
知れません。

 ただ気になっている要因としては、防災行政無線と救急消防無線のデジタル化です。
周知のとおり、防災行政無線は、260MHz帯域、救急消防無線は、270MHz帯域を使っています。
近年、これらの業務無線は、デジタル化によって急速に普及してきました。
ネット上では、上記周波数のスプリアス等が影響しているのでは、との情報もあります。

 取りあえずの対応策としては、相互のリンクに時間がかかる現場では、DMXケーブルや
イーサネット等の有線を用いることを検討する必要が有りそうです。

Open DMX Ethernet (ODE) は、ENTTEC社の Open DMX USB から発展した製品で、イーサネット を経由してDMXを出力します。
DMXポートは OUT、IN を各一個装備(ただし、同時使用は出来ません)、外観は手のひらに収まるコンパクトなサイズです。
電源部分として、DC7V の専用DCアダプターが同梱されています。

各種の設定はフリーウェアのNMU(Node Management Utility) を使用して、デバイスの名称、IP Address の設定、プロトコルの設定を行います。
プロトコル仕様は Art Net と ESP に対応しており、ArtNet 設定は Subnet、Universを、 ESP設定は Universe を選択できます。
また、DMXポートの設定は、In か Out を選択可能です。
なお、このNMUは、ODE本体の Firmware アップデートもできるので非常に便利です。

上記、ODEとブリッジタイプのアクセスポイント(今回は、メルコ製WLAE-AG300N/V2を使用)を活用して、ワイヤレスDMXシステムを構築します。
このアクセスポイントを用いることで、簡単にワイヤレスDMXが実現することが出来ます。
ここでは、主にODEの設定方法を中心にして、ご紹介致します。なお、ソフトのインストール等は、全て自己責任でお願いいたします。

接続イメージとしては、下記のとおりです。

(ENTTEC社のHPから抜粋)

  1. 最初にODEを入手します
    ODEは、オーストラリアのENTTEC社が製造しており、個人で輸入するか、専門店で購入するかのどちらかになります。

  2. ブリッジタイプのアクセスポイント
    幾つかの種類が各メーカーから発売されていますが、最も簡単に購入できるブリッジタイプのアクセスポイントとして、今回は、メルコ製 WLAE-AG300N/V2 を使用することにしました。
    この機種は、2台セット(送信側と受信側)で販売されおり、この2台は最初から接続設定が済んでいるもので、煩わしい無線LANの設定が不要です。 アンテナも内蔵されているので、外観も至ってシンプルです。
    コンセントにそれぞれを接続するだけで、自動的に無線LANのリンクが完成します。

    通常は、5GHz帯の周波数でリンクされますので、混雑している2.4GHz帯とは違って、混信等の不安定要素が少なくなります。

    機材名 数 量 備 考
    Open DMX Ethernet (ODE) 2台 アカリセンター扱い
    メルコ社 製WLAE-AG300N/V2 1セット、2台 量販店各店
    XLR 3ピン - 5ピン 変換 オスメス各1本 専門店

  3. ODEの設定をする前に
    まずは、ENTTEC社のHPから Node Management Utility( NMU ) をダウンロード、インストールします。このソフトは、フリーソフトです。 製品に同梱されているCD-ROMにも添付されているのですが、わたしは最新版をENTTECのHPからダウンロードしました。 このソフトを用いて、ODEの設定をします。
    NMU をインストールしたら、普通のLANケーブル(ストレートケーブル)でPCと ODE を接続し、PCが認識した後にNMUを起動します。
    PC環境にもよりますが、PC が ODE を認識するまでに若干の時間がかかる場合もあります。(約数分)

    ↑起動しただけの画面

  4. インプット側のODE設定
    それでは実際の操作に移ります。なお、パソコンに関する各種インストールの説明は、ここでは割愛します。

    1)Discovery をクリックして、つながっているODEを画面に呼び出します。
    2)現れたODEを選択します。


    3)Configuration をクリックして設定画面を出して、下記の通り入力します。

    4)IP Addresの入力欄にそれぞれ、2.24.197.30 と入れます。
    5)[Protocol]で ArtNet を選択します。
    6)[Subnet]で 00 を入力。
    7)[Universe]で 00 を入力。
    8)[Port Direction]で Input DMX を選択します。
    9)[Save config]を最後に押して、インプット側ODEへ設定を書き込みます。
  5. アウトプット側のODE設定
    基本的な操作は、インプット側と全く同じです。

    1)Discovery をクリックして、つながっているODEを画面に呼び出します。
    2)現れたODEを選択します。

    3)Configuration をクリックして設定画面を出して、下記の通り入力します。


    4)IP Addresの入力欄にそれぞれ、10.24.197.30 と入れます。
    5)[Protocol]で ArtNet を選択します。
    6)[Subnet]で 00 を入力。
    7)[Universe]で 00 を入力。
    8)[Port Direction]で Output DMX を選択します。
    9)[Save config]を最後に押して、アウトプット側ODEへ設定を書き込みます。
  6. ODE、アクセスポイント、コントローラー、灯体との接続
    ここまで来ると、後少しで完成です。
    各アクセスポイントと各ODE、コントローラー、灯体をそれぞれに接続します。
    なお、アクセスポイントは、どちら側にインプット、アウトプットを接続してもかまいません。 電源投入後、しばらくして双方とも緑色のLEDが点灯すれば、その時点で無線LANはリンクされており、DMX信号の交信が可能です。
    ポイントは、次のとおりです。

    ◎インプットモード側のODE⇒コントローラーへ接続
    ◎アウトプットモード側のODE⇒灯体へ接続

    【 後は、通常通りの接続をすれば、完成です 】
  7. LED表示に関して
    DCアダプター入力端子の口と有線LANコネクターの間に、4つのLEDがあります。
    右側の写真を参照願います。OEDの動作は、このLEDの表示で確認することが出来ます。


    上の右側写真の裏側には、下の写真の通り、親切にもLEDの動作に関する説明のシールが貼ってあります。


    1:点滅していれば、OKです。
    2:ODEから見た、DMX信号の方向を表します。on で out 、off で in を表します。
    3:DMX信号のやり取りを表しています。DMX信号が変化する毎に点滅します。
    4:イーサーネットが成立している間、点灯しています。
  8. 実際の現場でODEとアクセスポイントを使用したレポートをご紹介します
    【 その1 】------------------------------------------------------------------
    2012年12月15日、実際の現場(芸能大会)で使用した時の写真を記載しておきます。
    (画像のクリックで、大きくなります)
    約7時間、通電したままでDMX信号の運用をしましたが、全く問題なく期待に答えてくれました。
    今回の各アクセスポイント間の距離は、直線距離で【 約15メートル位 】ですが、直接見通すことは出来ません。
    手で触った感じですが、ODEは、少しホンノリと暖かい感じで、アクセスポイントは、それよりもわずかに暖かい感触でした。

     
    ↑ アウトプット(灯体側)の接続例 ↑
    緑色のケーブルが灯体につながっています。薄く黒く見えるのが、エアキャップの下にある、APです。

     
    ↑ インプット(コントローラー側)の接続例 ↑
    ODEの下から出ている、黒いケーブルが変換を介してコントローラーにつながっています。
    右側に見えている黒いボックスが、アクセスポイントです。


    ↑ 舞台上の灯体側への配置は、こんな感じになりました。↑
    上部の中央、白い幕は、ホリ幕です。


    ↑ LEDは、このように点灯しています。(インプット側)
    ストロボ無しのために、少し写真がぶれました。

    ↓↓ よろしければ、Youtube 画像も参照下さい ↓↓

    【 その2 】------------------------------------------------------------------ (2013年08月27日:追記)
    2013年08月24日、バレエ発表会で使用した時の写真を記載しておきます。
    (画像のクリックで、大きくなります)


    ↑コントローラー側です。 写真右、舞台上手の袖幕下に、灯体側のODEを置いています。
    2つのODEの間隔は、見通し距離で、約15mくらいの距離があります。


    ↑舞台上手の袖幕下のODEです。


    ↑トンボに固定して首上げした、上手のLED3灯と下手のLED3灯です。
    今回は、照明チーフの意向で、バトンに吊るした【 ジョーゼット当て 】に専用で使用しました。

  9. 終わりに
    アクセスポイントに関しての信頼性は、まず問題無いと思います。
    ENTTEC社の ODE に関しても、約7時間程度の現場では、ほんのりと暖かくなるだけで全く問題ありませんでした。
    これからも使用していく中で、万一問題が出てくれば、その時点でレポート致します。

    応用としては、ODE:1台とアクセスポイント:1台で、ipad や iphone のアプリを用いて、ワイヤレスで DMX機器 をコントロールすることも可能です。下図参照。

    市販のアクセスポイントを用いて、安価に簡易ワイヤレスDMXを構築しようと考えておられる方々の参考になればと思います。